佐々木信一郎 氏「どんな子どもに育ってほしいですか?」

「子どもの何を育てなければならないのか」
佐々木 信一郎 氏 2019.8.25 研修会より

 「どんな子どもに育ってほしいですか?」と尋ねると、母親へのアンケートでは、多くの場合
第1位 思いやりのある子ども
第2位 自分に自信が持てる子ども
第3位 友達を大切にする子ども
第4位 何事にも意欲を持って取り組む子ども

という答えが返ってきます。しかし、多くの母親の行動は、
・文字、数を教えたがるお母さん
・~ができるように練習させたがるお母さん

が多く、幼稚園を選ぶときには、体操教室、絵画、英語、鼓笛~など幼児進学塾のように何かを教えてくれることが大切なポイントになっています。そのため、幼稚園では、百人一首を全部覚えさせる等を売り物にしているところが増える傾向にあります。つまり、お母さん達は、「非認知能力」を願いながら実際には「認知能力」を伸ばすことをやっていることになります。

認知能力と非認知能力について、もう少し解りやすく説明したいと思います。

認知とは、IQ(知能指数)・学力・知識・「○〇ができる」というようになったと表現されるもの、など。非認知とは、愛着・意欲・自己コントロール・自己肯定感・自己効力感・自尊心・共感性、協調性などです。

多くの研究や統計から、「人の社会的な成功・幸福は感情的知性によってもたらされる。感情的知性は、遺伝よりも教育や躾け、あるいは個人の意思によって後天的に獲得できる。」という結果が出たとのことです。しかし、認知と非認知の両方を同時に高めることは出来ない。「認知」を無理に高めようとすると「非認知」がしぼんでしまう。

では、どうすればいいか?  
→「○〇しなさい」と押し付けるのではなく、子どもの興味・関心により主体的に選ぶ

→好きなことを気が済むまで繰り返す
→満足感・達成感(生の躍動感)が得られる
→結果的に様々な能力が見につく
→主体性・意欲・自己選択力・自信・自己肯定感・挑戦力などが育まれる。

しかし、これらの基本となるものは「愛着」(最も基本的な非認知能力)である。愛着は生得的な力である。まず、これを育てることが重要。育て方は、愛着の敏感期である1歳半くらいまでは、出来るだけ抱いてあげる。ありのままを受け止める。一貫性を持つ。そして、親から離れたりくっついたりし、応答的に接していると、愛着が発達し、3歳になると、内在化され、もう母親が側にいなくても「心の安全基地」が出来上がる。

ここで気を付けなければいけないことは、子どもの認知/非認知を育てるためには、「自由」が絶対に必要だという事です。選択の自由を与え、その子の興味・関心をくみ取ること(待つこと)。子どもに教具・教材の提示をし、やり方を伝える事。※もしこれがうまくいかない場合、子どもは反抗したりする。又、いい子になり、自分を捨てる場合がある。子どもが必要としていることは、教えることが必要。その後、子どもの中で熟成するのを待つこと。

又、「自由」とは、選択・時間・場所・質問の自由など。自由の保障がないと自由の裏の「規律」は育たない。他人を怒らせたり、傷つけたりする行動を全て止める。無作法で粗野な行動も止める、その積み重ねで「受動的規律」が育つ。次に、自由の中で、自分の考えや行動を選択する。それに対しての責任を持つ、ことで「能動的規律」が育つ。
最後に、国によって自由のとらえ方が異なるので向き合って考えなさい、と言うことでした。
 
※ 佐々木 信一郎 :福島県、こじか「子どもの家」発達支援センター園長
著書「子供の潜在能力を101%引き出すモンテッソーリ教育」講談社+α新書