1~3歳の時期に大切にすべきこと

1~3歳の時期に最も重要なこととは何でしょう?
私達は、どう子供と接したら良い成長が望めるのでしょう?
そのことについて考えてみたいと思います。

No.1-「運動・言語・排泄」

「1・2歳児は、言語と運動の敏感期」と言われます。

『言語』

『言語』については、1歳9か月くらいから単語の爆発が始まり、2歳を境に文の爆発が始まります。しかし、そこに至るまでには、それまでの言葉の貯金が必要です。つまり、毎日毎日の人間の肉声による地道な積み重ねが爆発を生むのです。
 九州幼児教育センターの前所長で心理学の教授であった藤原藻元一先生は、800回必要だと言われました。一年は365日だから、「ご飯ですよ。」と離乳食の時期の5~6か月から日に3~5回言い始めたとして、遅くても1歳半頃には「ご飯」と言えるようになるという計算になります。耳は、妊娠3カ月から聞こえていますが、マスターさせるにはゆっくりはっきり繰り返し言ってやることが大切です。パンツをはくときには「パンツをはきましょう。」、お茶を飲むときには「お茶ですよ。」と、毎回言ってやること。行動と言葉を一緒にすると、言葉の意味を自然と理解していきます。

 同時に、絵本を読んでやることが大切です。というのは、私達が日常使っている話し言葉は、主語や助詞が省かれていたり、前後が入れ替わったりしています。絵本の書き言葉は、日本語の文法どうりに書かれています。繰り返し聞くことで、子供はいつの間にか日本語の文法をマスターし、言葉を自由に使いこなせるようになるのです。

 以前、知的障害児施設「しいのみ学園」の昇地三郎先生とお話した時に、先生が「言葉=(イコール)知能です。」と断言されたので、驚きました。後になって、言葉ほど抽象的なものはないので、年齢相応に言葉の理解が進まないと、発達の遅れを心配しないといけないということが分かりました。

『運動』

 『運動』には、全身の運動と手の運動があります。子供達は、とにかく動くのが大好きです。歩き出したら、あちらこちらと歩き回る。手当たり次第に物を触る、つかむ、握る、といったふうです。動くこと、経験することでしか発達しないことを知っているのです。だから、子供がじっとしていたら、とても心配しないといけません。

 全身の運動については、歩き出したら、次の段階として「重いものや大きいものを持って歩く」「階段の上り下り」「歩く距離を延ばす」「坂道を歩く」「でこぼこのある道を歩く」「走る」「跳ぶ」などになっていきます。

 アメリカの人間能力開発研究所の創立者、グレン・ドーマンは、40年以上にわたり、100を超える国々を訪ね研究を重ねた結果、彼とスタッフたちは、次のテーマを繰り返し強調しています。

・人間の脳は使うことで成長し、その成長は実質的には6歳で完了する。
・小さな赤ん坊は、なによりも学ぶことが好きである。
・小さな子どもは、大人、とくに母親や父親が自分にたえず注目してくれることが、この世で一番大切な贈り物(おもちゃ)だと思っている。
・歴史上最強の学習チームは、親と子のチームである。

 手の運動については、人間は手を使うことにより火をおこし道具を作って、文明を築いてきました。又、手を使うことにより脳を大きくしてきました。だから、「手は第二の脳である」とも言われます。他の動物との決定的な違いでもあります。

 色々な手の動きや両腕を使うものを準備してやることが大切です。子供が出来ることは、工夫して子どもサイズにし、子供にやらせましょう。その時に、「はいどうぞ、やってください。」ではなく、まず大人がやって見せることが大切です。子供の目は、まだ大人ほど動きを素早く理解できるようには成長していないので、ゆっくり丁寧に見せることが大切です。

 3歳頃までは、大人と一緒にやり、繰り返すことで子供の出来る部分が増えていく。そして、ある日、子供が一人で出来るようになっていた、となるようです。

『排泄』

 『排泄』の練習の時期でもあります。発達は、上から下へ、中心から外へ(頭から足の先へ、体の中心から手の先へ)向かって行きます。だから、自分の足で立てるということは、もう膀胱からオシッコが出るのが感覚的に分かるはずなのです。

 だから、まず、オシッコが出たら、「まだ出る?」と言って、オマルに座る練習をしてみましょう。また、一番オシッコが出やすい時間――朝起きた時やお昼寝の後にオマルに座らせてみましょう。オシッコでパンツを濡らしたら「気持ちが悪いね。」と言って脱がせ、はく時に「気持ちがいいね。」と言ってやります。濡れる→気持ち悪い、乾く→気持ちがいい、を結び付けていきます。24時間の生活の中で御飯を食べたらトイレに行く。その機会機会をとらえて排泄の習慣を身につけることが大切です。

 パンツやズボンを脱がせる時もはかせる時も、なるべく出来ない所だけをやってあげましょう。
例えば、①「こっちが前ね。」と言って、パンツには前と後ろがあることを教える。
② 足を入れる穴が見えるように広げ、「足を入れましょう。」
③ 片方の足が入ったら、「右足ね(左足ね)。」「左足(右足)も入れましょう。」などと言って自分の足であることを意識させ、子供が自分で足を入れるまで待つことが大切です。

 子供の足を持ってパンツの穴に入れたりはしないで下さい。子供が自分で足を入れようとした時に、頭からの指令が足に届くのです。その繰り返しが発達を促すのです。発達するチャンスを、大人が待てずに奪っている場面をよく見かけます。とても残念です。排泄の練習は、着脱の練習でもあり、言葉の獲得のチャンスでもあります。

 排泄する時は「トイレ」という特別の部屋に行くことも教えます。だから、オマルを台所や寝室に置くのは不適当です。トイレの近くに置いてください。

 次に、定期的に時間を決めてトイレに連れて行くということが必要になります。
 ・寝る前   ・起きてから   ・食事の前など

 排泄の練習で、気を付けないといけないことがあります。

『トイレをしたからといって誉めすぎない。排泄というのは正常な人間の機能であるから、誰しもがする行為です。大騒ぎをすると特別なことだという認識を持ってしまい、失敗をしたときに逆のアクションになってしまいます。つまり、排泄は普通のことだと思わせることが大切です。アクシデントも通常の範囲内です。「バイバイ」は、自分の一部が消えていっている、というイメージになるのでよくありません。』

『紙おむつ』について

 最後に、紙オムツについて書きます。残念なことに、近年、世界中で紙オムツが使われています。その弊害も現れています。私が学んだ精神科の医師であるモンタナーロ先生は、『紙オムツは、オシッコが出ている感覚はあるが、その結果の濡れている感覚を知らずに過ごしてしまう。つまり、身体感覚と起こったことが分断される。赤ん坊は、起こったことが感じられない。この「無感覚」は全ての皮膚感覚にも影響を与える。』と言われました。

 今、手軽だからと安易にやっていることが、子供の20年先、いえ一生涯に影響し続けるのです。現代社会に生きている私達にとって「子育て」は、昔よりはるかに難しいものになっているように思えます。常に「便利なもの」の正体を見極める賢い目を持たなければなりません。

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