家庭でもできるモンテッソーリ教育1

 モンテッソーリ教育は、いわゆる、「モンテッソーリ教具」がないと出来ないと思われている方が多いと思います。そうでもありません。「モンテッソーリ教育」には、二つの要素があります。

一つは、“教具”です。モンテッソーリ先生は、当時、精神遅滞児や野生児の研究をしていた、フランスのイタールやセガンの感覚的再教育法に学びました。そして、モンテッソーリ教具なるものを構築しました。

二つ目は、“子どもの見方・考え方”です。モンテッソーリ先生は、イタリアで最初の女性医者になりました。その医者の科学的目で、子どもを観察することによって、子どもの本質を発見しました。ここが、モンテッソーリ教育の優れたところです。

では、「子どもの本質を発見した」ことによる“子どもの見方・考え方”を使って、家庭でどんなことができるかを考えてみましょう。

その前に、幼稚園のクラスの中を見てみます。部屋の中は、だいたい5つのエリアに分かれ、「日常生活の練習」「感覚」「数」「言語」「文化」の5領域の教具が準備してあります。

1.「日常生活の練習」

日常生活の練習とは、私達が日頃、生活の場で行っていることです。
「日常生活の練習は子どもたちにとって、自己形成と共に自立に向かう場として大変重要な意義を持っている。」と書かれています。
どんなものがあるかというと、

◆環境の配慮として   :簡単なクッキングや食卓の準備、掃除、洗濯、小動物の世話、植物の栽培、花を生ける、指先の洗練(玉通し、縫い刺しなど)。

◆自己自身への配慮として:身繕い、手を洗う、靴磨き、着衣枠(ボタン掛け、蝶結び、ファスナーなど)等。

◆社会への適応として  :挨拶、受け答え、人との交わり方、公共の場所での態度、などがあります。

それらを、子どもが「一人でする」ようにするにはどんな準備と援助が必要でしょう。

①子どもサイズにする。

②いつも同じ場所に置いておく。
(その作業で使う物は、まとめて一つのトレーに入れておく。近くに置いておく。)

③やり方を、ゆっくり見せる。
(動体視力が大人の1/8だと私の先生は言われました。)
         左右の手を同時に動かさず、片手の動きずつにする。
         動きと言葉も同時に与えず、どちらかずつにする。

≪掃除≫
 例えば、掃除について考えてみます。掃く、拭く、があります。

「掃く」ためには、子どもサイズのホウキ、チリトリ、ごみ箱が要ります。片付けやすいために、どこに置くか掛けるかも考えます。

「拭く」をするのでしたら、子どもサイズの台拭きや雑巾(幼稚園では、約9×12センチ:台拭きは白、雑巾は黄緑を準備しています。)やバケツが要るでしょう。ワイパーを使っての掃除もよいと思います。片付けやすさのために、どこに置くか掛けるかも考えます。

幼稚園では、ホウキ・塵取り掛けがありますが、お家では柱や壁などを利用したらよいと思います。
子どもサイズの台拭きや雑巾 ワイパーを使っての掃除 ホウキ・塵取り掛け

(約9×12センチ)

台所は子どもにとって宝の島です。簡単なクッキングや食卓の準備など、できるだけ子どもサイズに準備し、手順を考え、挑戦してみましょう。

大事なことは、必ずやり方を見せることです。子どもの動体視力は、大人の何倍も遅いので、ゆっくり丁寧にやって見せます。「ひとりでするのを手伝ってね。」をモットーに、初めはぎこちなくても、訂正や非難をせず、繰り返しやるうちに自分一人で出来るように、忍耐を持って笑顔で見守ってあげましょう。

「子どもには、大人のエネルギーとは全く違う特別のエネルギーがある。子どもというのは活動的なときに幸せを感じる。」「子どもは自分で経験して初めて学ぶことができる。」といっています。そういう意味で、日常生活の練習は今こそ楽しんでやれる時だと思います。

また「全ての感覚的印象が、全ての知性を作り上げる構成要素になる。」ともいっています。持った時の、重い・軽い、大きい・小さい、長い・短いなど。触った時の、冷たい・熱い、ツルツル・ザラザラ、すべすべ・デコボコなど。またどんな匂いがするか?どんな味がするか?など。

日常生活の練習でやった感覚的経験は、3-6歳でやる活動の裾野を広げ、土台を豊かにしてくれます。