子どもの「やる気」を大切に

 昨年の11・12月に、0歳児の部屋に7人の新入園児がありました。その子供達を見ていて、とても気になることがあり、ずっと考えていることがあります。

 それは、うちの子は大丈夫です。しっかり練習してきましたから、と言われた子供に限って、いつまでも泣くことが多いということです。

 確かに、運動面でよく発達するようにかかわったということで、10か月で歩くようになっていました。又、お母さんが一緒におられる時にはよく活動していたので、その時は私もなるほどと思っていました。

ところが、お母さんの仕事が始まり、一人置いて行かれると、抱いていても、何時間も何日も泣き続けるのです。途中で病気になったりお正月休みが入ったこともあるでしょうが、2か月経った今も、朝お母さんと別れる時は激しく泣くので、そのまま泣きやむまで好きな活動に誘ったしながら抱いています。

30分ほど経つと、やっと泣きやみ、歩き出すといったふうです。その後も、泣いては抱かれ、いつも一人の保育士が側にいないと活動ができないといった様子です。その原因はなんだろうと、いつも考えていました。

 ところで、私は、年に3回土日に開催される『福岡家族心理臨床カウンセリング研究会』に10年ほど参加していますが、1月11・12日に開催された「気になる子供と気になる親への支援と教育」の中での、あるページに引き付けられました。それは、神田橋先生が薦める『精神医療につながれる子』嶋田和子さんのルポ、の一節、「一緒にいる大人が選んでさせるのではなくクレーン現象で大人を引っ張るなら、引っ張られてあげる。」というところです。講師の、長年教師とカウンセリングをされているシスターは「大人の敷いたレールに乗せようとすることが一番子供をダメにする。」と説明されました。

 又、先日まとめた『愛着・分離・個の確立』のなかにも、「分離をより良く行うための心理的条件があります。それは、エネルギーの波動を尊重することです。例えば、新生児は母親の胸に愛着すべきなのを、させないのは自然エネルギーに反します。」とあります。つまり、子どもの自然な発達以上に大人が、かかわり過ぎたのではないかというのが、私の見立てです。

 生後2カ月までに形成される「環境への信頼」と生後9カ月までに形成にされる「自分自身への信頼」という精神の2本の足は、一つ欠けても、遠くまで歩くことができません。9カ月でできる自分への信頼は、自由な動きを通して様々な経験(ずり這や這這い)をし、動きの自由を獲得するということによって、一人で出来るのだという自我が芽生えてきます。

 幼くして形成される精神の二本の足と子どものエネルギーの波動を尊重することを知って育児をしてほしい、と願ってやみません。