父親の役割について

 
 朝夕のお迎えを見ていると、お父さんやおじいちゃんの姿をよくみかけるようになりました。仕事や家事、子育てなど、男女平等にするという考え方が主流になってきたことも背景にはあると思います。今回は、父親(男性)の育児参加が子どもの発達にどう影響していくのかを考えてみようと思います。

※ここでいう父親(男性)とは、単にDNAのつながりのみを指しているのではなく(同居している、おじいさんやおじさんなど・・・)、いつも子どもの身の回りにいる男性のことを指します。

 子どもの誕生する前の役割としては、妊娠中の妻(女性)に『精神的満足感を与えること』が大きな役割といえます。具体的には『皿洗い』や『掃除』などの家事の割合を増すとか、病院に連れて行くなどあるでしょうが、両親がそろって、子どもにはどのような環境が必要なのか?どのようなものを購入すればよいのか?二人で納得のいくまで話し合い、結論を得ることが重要です。生まれてくる子どもについて話し合うことで、妊娠中の母親は気分が高揚し、エンドルフィンの分泌を促します。これがお腹の子どもにもいい影響を与えます。また、こうして子どもを授かることについて話し合ううちに、子育てには大きな責任があることを認識していきます。子どもを社会に送る、人を育てることに対しての価値観を再度考えることになります。これは親自身が成長することにもつながります。

 共生期(生後8週まで)に入ると、『母親と子どもを、周囲の環境から保護する(守る)』役割が出来ます。(出産後の特別な母子環境を保つ)この共生期は特別な期間で、また、『母乳の習慣になれるため、母親を精神的に支える』というのもこの時期の父親の大事な役割であるといえます。

 もし、父親かそれに代替する人がいない場合、子どもをあやす人がいない→おしゃぶり、テレビなどに頼ることになります。父親がいれば、子どもをお風呂に入れるなどして、母親はその間リラックスできるでしょう。そしてこの時期の男性との関わりは、子どもにとって『父親と子どもの関係を初期の段階で確立する』・『母親との密着を防ぐ』(母親にばかり頼らなくても、もう一人頼る人がいる。これは母親との分離が容易になることにつながります。)

 共生期が終わり、子どもが離乳の段階になると食べ物が母乳ではなくなるので、環境から食べ物を摂ることができ、食事を父親が与えることができるようになります。これは子どもとの関係をつくる始まりとなります。そのほかにも歩けるようになれば散歩に行ったり、肩車などの男性特有の遊びをします。そうした父親との関わりの中、子どもは【女性と男性という二つの性があること】を学びます。

 父親の“男性像”は男の子、女の子両方に必要で、男の子は自分のモデルとして、女の子は自分のパートナー、自分が関わっていく異性の参照座標(異性の模範)として父親と関わっていきます。父親が何かの理由でいない場合には、補完・代替となる、常に一定時間を過ごす男性を確保することが必要です。(例えば、おじいさんであったり、おじさんであったりです)

 父親と母親がお互いにどう関わっているのか?お互いの関連性を子どもは普段の生活の中から吸収し、自分が親になる準備をしているのです。父親が時間をかけてあげる・かまってあげることは、その子ども自身が、父・母になったときに大きな影響を与えることにつながります。

 父親が子どもの胎内妊娠期・出産・出産後に母親や子どもと関わっていくことは、父親本人やその子どものためになるばかりではなく、広く社会のために、役に立つ・貢献することになるといえるでしょう。

※「母親は、子どもを受け入れ栄養を与える大地である。一方父親は、子どもを芽吹かせる太陽である。」 アルフレッド・トマティス(著書「海と生活」「耳と言語活動」「宇宙を聞く」)